絵画の寿命

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ヤフオクに出品されていた日本画。書も絵も上手い達人の手による作品だが、幅1mの大作で普通の家では飾る場所もないからか、あるいは傷みすぎているせいか、500円でも落札者は現れなかった。今後この絵はどうなるのだろう。処分されるのだろうか。捨てられるとしたら残念だが、保管するにも金は掛かるわけで、こういう引き取り手のない絵を救う良い案は思い浮かばない。

捨てられる絵のことを思うと胸が痛むが、正直に言えば、これでいいんじゃないかとも思う。紙に描かれた絵はどうしても変色やシミなど経年劣化を避けられないし、この絵はこうやって額に入れられ、きっと長いこと誰かの目を楽しませてきたのだから、天寿を全うしたと言えるのではないか。

絵を描くようになって思ったのは、みんなもっと絵を気軽なものとして考えたらいいのに、ということ。絵画は芸術作品だから粗末に扱ってはいけない、文化財だから大切に保管し続けなければならない、という意識が先行している気がする。

立派な額縁付きの油絵が送料込2,000円でも買い手が付かない現実を見ていて思う。廃棄される前に誰かの部屋の壁に一度でも飾ってもらえれば……とりえあず気になった絵を千円、二千円で買ってみて部屋に飾ってみてもらえたらと。飾ってみたら空間に広がりや彩りが生まれて良かった、となるかもしれない。そうならなかった、あんまり良くなかった、ということならまあ捨てるということで。それでも落札されずにただ廃棄されていくよりかはずっと良い。

以前ミュシャの模写を描いて通っていた教室の展示会に出した時に、照明の映り込みが気になってガラスを外して展示したいと思ったが、汚れてしまうかもということでガラス付きで展示した。自分としては汚れないことよりも映り込みなしで見てもらうことの方が重要だと感じていたが、実際に汚れて戻ってきたらショックだったかもしれないから、どちらが正解かは分からない。

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ただ基本的に私は絵画を消耗品、日用雑貨みたいな感覚で使っても良いと考えている。保護もせずにそのまま壁やドアに貼って楽しみ、汚れたら捨てて新しい絵を買う。捨てるのは心が痛むし、泣く画家もいるかもしれないが、そういう「生活の中に絵画を取り入れるサイクル」が社会に広がれば絵の需要は高まり、絵を描く側にとっても絵画を制作する意味が趣味の領域を超える可能性が高まるから悪い話ではないと思う。

歴史に残る名画も大切に保管し続けるために描かれたわけではないはず。